Vol.23 HySerpackとサーボ弁との比較(Z)
流量制御型サーボ弁を用いて圧力制御を行う場合、負荷の反力又は油圧を検出してフィードバック制御することを誰でも考える筈です。所がこのようにして動作させて見ると、とんでもないことになります。設定圧力(又は設定推力)で落ちつくどころではありません。瞬間的に最高圧力にまで上昇してしまい、あわてて設定圧力を下げると今度は圧力ゼロにまで低下してしまう。即ちON/OFF制御のような動きとなってしまいます。
Vol.22で説明したように、サーボ弁の見掛け上のヒステリシスが増加した形となり、圧力を上昇させて設定圧力にするのと、圧力を下降させながら設定圧力にするのとでは大きな差が出てきます。
文献にはこのような場合、積分特性の電気的補償を行う方法や負荷に積分特性に近いおくれ要素を持たせる方法が紹介されているが、このような方法では全て位相おくれが発生し更に最悪の状態に陥る可能性があります。負荷に積分特性を持たせるにはアキュムレータを挿入すれば簡単であるが、アキュムレータはその構造上ゼロから最高圧力まで使用することが出来ず、非常に狭い圧力範囲でしか使えません。
Hyserpackは圧力制御が得意です。油圧ポンプの吐出量は次式で求める事が出来ます。
P(MPa )=2π・T(N.m)/Q(cc/rev) |
この式を見ると、 固定容量ポンプを選定したとすると、ポンプの容量は一定であるため、油圧Pは電動機のドライブトルクTに比例することが理解できます。従って電動機の出力トルクTを制御することによって油圧Pを自由に決めることが出来る訳です。
当社では既に超大型免震ゴムの試験装置で垂直荷重をゼロから200トンまでリニアに変化させ、次に200トンから荷重ゼロまでリニアに低下させる、いわゆる三角波の荷重試験を直線性1%以内の精度で実用化させております。
Vol.24 HySerpackとサーボ弁との比較([)
サーボ弁は通常4ポート弁ですがスプールを左右に移動させる構造となっており、そのスプールを全開から全閉まで連続して位置制御する事が出来る、即ち4個の絞り弁をブリッジ状に接続したものと同等であると、ミニミニ辞典Vol.18で説明しました。
ところがこの絞り弁は構造が極めて単純ですが、負荷変動及び作動油の温度変化で流量が簡単に変化してしまいます。
この流量変化は負荷変動によって、絞りの入り口と出口の圧力差が変化するためと、油温の変動に伴う作動油の粘度変化によるものであることは読者の皆様が既に御承知のことで、改めて説明する必要もないことでしょう。
サーボ弁を使用したシステムはフィードバック制御が普通であり、負荷変動も油温の変動もフィードバックループ内で自動的に補償され、何の問題も起きないと考える方もおられる筈です。
油圧シリンダは作動油が一方のポートから押し込まれ、その作動油の流量に比例した速度でロッドが移動します。即ち作動油の流量を積分したものがロッドの変位になります。従って油圧シリンダは積分要素であり、フィードバックループ内に積分要素が入って来ると自己平衡性がなくなります。
このように自己平衡性のない制御系は安定性と即応性を共に満足させることは極めて難しく、一方を良くすれば他方が悪くなるという相反する関係にあります。従って綱渡りのような調整(チュウニング)が必要となり、フィードバックループ内に絞り弁のような不安定要素が更に入って来ると、やっと調整したのに油温が変わったら不安定(発散現象ともいう)になってしまった。又は負荷を変えた途端にハンチングが発生してしまったということになります。
HySerpackは作動油の流量は油圧ポンプの回転数で決定されるので、油温が変わっても油圧シリンダに送り込まれる流量は一定です、又負荷が変動してもポンプの回転数が変動しない限り、流量は殆ど変化しません。従って一旦調整したパラメータをその都度、調整し直すような煩雑なことをする必要がなくなりました。