Vol.21 HySerpackとサーボ弁との比較(X)

 HySerpackに組み込まれている油圧ポンプは動摩擦抵抗だけで静摩擦抵抗は発生しないとVol.20で説明しましたが、それならば油圧シリンダの静摩擦抵抗をどうするのかという疑問が出てくる筈です。
 この問題に関してはVol.8で、ポンプの吸入量QiとQoはQi=Qoの関係にあることから、シリンダを微小速度で動かしてもスティックスリップが発生しないと説明しましたが、それ以外に油圧ポンプはどのような形式のものでも、油圧を吐出する時に僅かの吐出量の変動(リップル又は脈動とも言う)があり、それが微小な圧力変動となってシリンダに作用します。
 このリップル分がディザ信号回路と同じ効果となり、シリンダの静摩擦抵抗を減少させることになります。結果としてスティックスリップが発生しにくい環境を作り出していると言うことです。
 皮肉なことにポンプの欠点である内部漏れがポンプの静摩擦抵抗を減少させ、諸悪の根源と言われたリップルがシリンダの静摩擦抵抗を吹き飛ばしてしまったことになります。
 従ってサーボ弁を使用した制御システムでは必要とされたディザ信号回路もDDVC方式のHySerpackでは使う必要が無くなりました。
 HySerpackは油圧ポンプの欠点と言われた内部漏れとリップルを逆手にとり、油圧シリンダの動作を極めて滑らかにすることに成功した、非常に特徴のある油圧アクチュエータであります。


Vol.22 HySerpackとサーボ弁との比較(Y)

 Vol.20でサーボ弁はスレッショルドやヒステリシスによりスティックスリップ及び動作方向によって停止位置が異なるという現象が発生すると説明しましたが、その量は平均して約3%と言われています。
 なぜサーボ弁はヒステリシスやスティックスリップが多いのでしょうか。それはサーボ弁の構造に起因しております。通常のサーボ弁は入力電流をパラメータとしたスプール変位制御を行っております。入力電流によってフラッパーが動くとスプール両端の圧力バランスが崩れ、それを補償しようとスプールが動きますが機械系の摩擦抵抗が以外と大きく大きなヒステリシスが発生します。ヒステリシスが有るということは不感帯も同時に発生します。不感帯があればスティックスリップも発生するのは当たり前です。
 ヒステリシスがあってもプレス機械のように一定の位置まで加圧して停止させるものならば問題ありません。然し目標位置を設定し、押し動作でその位置まで動かして止めることと、引き動作で同じ位置まで動かして止めることは至難の業です。場合によっては停止位置が数ミリメートルもずれてしまうことがあります。
 停止位置のずれを少なくしようとサーボゲインを上げると不安定となりハンチング(発散現象)が発生してしまう。このように一方向だけならば目標値に対して数ミクロンの位置制御が出来るサーボ弁でも双方向の位置制御となるとヒステリシスに泣かされることになります。
 HySerpackの場合は油圧シリンダのロッド位置をリニアスケールで測定しフィードバック制御を行うことはサーボ弁制御と同じですが、目標位置と現在位置をサーボ増幅器で比較し、その偏差分で直接サーボモータを駆動しているためサーボ弁と比べてヒステリシスが減少します。その結果双方向の停止位置が殆ど一致することになります。
 勿論完全に一致させることも可能です。その方法はフィードバック制御に積分機能を付加し直列補償を行うことによって得られます。




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