Vol.19 HySerpackとサーボ弁との比較(V)

 前回サーボ弁は4個の絞り弁がブリッジ状に接続されたものと等価であると説明しましたが、この場合4個の絞り弁が全く同じように半開になっている時がサーボ弁の中立位置と同じ状態と考えるとP2及びP3の油圧はどちらもP1の1/2となります。例えばP1=20MPaとするとP2もP3も共に10MPaとなります。P2もP3も同じ圧力であることはこの力はお互いに相殺され、シリンダロッドは止まったままで何の仕事もしていないことになります。
 このようにシリンダロッドが停止している時でも両側のシリンダ室には大きな圧力が加わっており、この圧力の約倍の圧力を造り出すために電動機と油圧ポンプは休みなく動き続けております。勿論このエネルギーは仕事に全く使われず、オイルタンク内部の作動油の温度を上昇させることだけに使われております。作動油の温度上昇を放置すれば、粘度が急激に低下し油圧ポンプの内部漏れが増加することによって更に油温の上昇が加速されます。いわゆる熱暴走がはじまります。こうなると作動油の分解と炭化が始まるのでそのまえに冷却しなければなりません。強制冷却を行うためには更に動力を必要をします。
 このようにサーボ弁の効率があまりにも悪いため強制冷却のための電力も加算され、更に効率低下を招くという悪循環に陥ってしまいます。HySerpackはP1=20MPaとした場合、P2=20MPaとなり、P3は圧力ゼロとなりますのでこの20MPaの圧力は全て推力に変換され100%仕事に使われることになります。従ってエネルギー効率が格段に向上した分だけ発熱も激減することになります。発熱が無くなれば作動油の強制冷却も必要なく、冷却のための動力も不要となります。


Vol.20 HySerpackとサーボ弁との比較(W)

 サーボ弁は4ポート方向切替弁の一種であり、通常のon/off動作ではなく各ポートの絞り量、即ち流量を無段階に制御出来るものであります。流量は流路の切替を行うためのスプールの変位をサーボコントロールし、各ポートの絞り量を変化させることで制御可能となります。
 サーボ弁で油圧シリンダ(又は油圧モータ)をドライブする時、通常の4ポート方向切替弁のように全開又は全閉で使用する場合、さほど問題はありませんが、サーボ弁本来の使い方、即ち微小流量で動かそうとした時は困った問題が発生します。
 その問題とはスプールを中立位置(シリンダが停止する時)から僅かに開にし微小速度で動かそうとするとスプールの静摩擦抵抗のため、サーボ弁の制御電流がゼロからある値に達するまで動かない、所謂不感帯が生じます。そのためスレッショルドやヒステリシスによるスティックスリップ及び動作方向によって停止位置が異なると言う現象が発生します。
 この現象を回避するためにディザ信号回路により200〜600Hz程度の高い周波数の電流をサーボ定格電流の10〜20%の範囲で制御電流に重畳させ、スプールの静摩擦抵抗を減らす必要があります。
 HySerpackはディザ信号回路を必要としません。何故ならばシリンダが停止している時でも油圧ポンプは内部漏れのために完全に停止せず、非常に遅い速度で回転しております。従って油圧ポンプの静摩擦抵抗はなく動摩擦抵抗だけとなり、シリンダを微小速度でドライブしてもスレッショルドもヒステリシスも殆ど発生しません。
 当社の経験では1o/secの微小速度でもスティックスリップは全く発生せず非常に滑らかな動作となっております。




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