Vol.17 HySerpackとサーボ弁との比較
油圧シリンダを精密制御するにはHySerpackによるダイレクトドライブ方式とサーボ弁によるドライブ方式があります。
どちらも精密制御が出来るので、同じようなものではないかと思われていますが、実は全く違っております。
先ず第一に制御方式が正反対と言えるほど異なっております。HySerpackは図1のようにサーボモータで油圧ポンプを正逆回転させ、ポンプの吐出方向を切り換え、回転速度に比例した油量と、軸トルクに比例した吐出圧が得られるので制御弁を使用する必要がありません。即ち制御弁でなければ油圧アクチュエータを制御出来ないとされていたことを油圧ポンプに制御機能を持たせることにより解決してしまったことになります。
サーボ弁は図2に示すようにON/OFF制御しか出来ない4ポート方向切換弁のスプールをサーボコントロールにより無段階に制御することによって方向と同時に流量も高速に制御出来るように改良したものであります。
これは言い換えると、同時に各ポートの開度を制御することで、高速にオリフィス制御を行っていることになります。
従ってこの機能は図3のように書き換えて見ると良く理解出来る筈です。ブリッジ状に接続された4個の絞り弁が互いに相対する側同志ペアになり制御されているものと考えて下さい。4個の絞り弁が同時に閉じた状態の時は方向制御弁の中立位置と同じで油圧シリンダはロックされており、全ての絞り弁が半開となると油圧シリンダのヘッド側(ピストンロッドが出ている側)とキャップ側(ピストンロッドの出ていない側)の両方に圧力が加わります。
このような状態ではエネルギー効率が非常に悪くなります。何故悪くなるかの詳細説明は紙面の都合で次回とさせて頂きます。
Vol.18 HySerpackとサーボ弁との比較(U)
サーボ弁は通常4ポートスプール弁の形をしており、そのスプールの位置を全開から全閉まで連続に動かすことが出来るので、各ポートの開度をアナログ制御しているものと考えることが出来ます。従って、図のように4個の絞り弁がブリッジ状に接続されたものと同じと考えると便利です。
サーボ弁が中立状態の時は4個の絞り弁が全く同じように半開になっている時と同じと考えて下さい。この時はシリンダのポートP
2及びP
3の圧力はP
2=P
1/2,P
3=P
1/2となり、結果的にP
2=P
3となります。従ってP2及びP3は油圧源の圧力P1の1/2となり、シリンダに加わる圧力はP2=P3となるため圧力が均衡し、シリンダロッドは動きません。
この状態から絞り弁a,bを僅かに開き、c,dを僅かに閉にするとP2の圧力がP1/2よりも上昇し、P3の圧力はP1/2よりも下降します。従ってP2>P3となり圧力均衡が破れロッドは右へ動きます。
又作動油はシリンダが動かない時でも全ての絞り弁が半開状態になっているため、油圧源から油タンクへ向かって常に流れ続けます。
このように油圧源の吐出圧はシリンダが要求する圧力の×2〜×3、吐出油量も×2〜×3は必要であると言われている事が理解できる筈です。
HySerpackはこのようなオリフィス制御から脱却することが出来たため、シリンダが要求する油圧及び油量だけ供給出来る油圧源があれば問題なく動作し、サーボ弁を使用したシステムの油圧源と比較し1/4〜1/9のパワーがあれば充分実用になります。