◆ Vol.21 HySerpackとサーボ弁との比較(Ⅴ)
HySerpackに組み込まれている油圧ポンプは動摩擦抵抗だけで静摩擦抵抗は発生しないとVol.20で説明しましたが、それならば油圧シリンダの静摩擦抵抗をどうするのかという疑問が出てくる筈です。
この問題に関してはVol.8で、ポンプの吸入量QiとQoはQi=Qoの関係にあることから、シリンダを微小速度で動かしてもスティックスリップが発生しないと説明しましたが、それ以外に油圧ポンプはどのような形式のものでも、油圧を吐出する時に僅かの吐出量の変動(リップル又は脈動とも言う)があり、それが微小な圧力変動となってシリンダに作用します。
このリップル分がディザ信号回路と同じ効果となり、シリンダの静摩擦抵抗を減少させることになります。結果としてスティックスリップが発生しにくい環境を作り出していると言うことです。
皮肉なことにポンプの欠点である内部漏れがポンプの静摩擦抵抗を減少させ、諸悪の根源と言われたリップルがシリンダの静摩擦抵抗を吹き飛ばしてしまったことになります。
従ってサーボ弁を使用した制御システムでは必要とされたディザ信号回路もDDVC方式のHySerpackでは使う必要が無くなりました。
HySerpackは油圧ポンプの欠点と言われた内部漏れとリップルを逆手にとり、油圧シリンダの動作を極めて滑らかにすることに成功した、非常に特徴のある油圧アクチュエータであります。
